箱根町町長
山口昇士氏
夏の箱根を彩る風物詩「CAT Ladies」の意義を語る
Cat Ladies が神奈川県箱根町の大箱根カントリークラブを舞台に開催されるようになって今年で22回となる。
ゼネラルプロデューサーの戸張捷氏はここを選んだ理由を、
「8月という真夏の開催時期を考慮すれば、まず避暑地のゴルフリゾート。そして、東京からも日帰り圏内ということを考えて、箱根がベストという結論になった」と当時を振り返る。
箱根町におけるゴルフの歴史は古く、100年以上も前の大正時代から始まる。現在、町内には8コースものゴルフ場があり、首都圏のゴルファーの多くはここでゴルフを楽しんだことがあるはずだ。
箱根は国内で最も有名なゴルフリゾートである。そして、そこでCat Ladies はすっかり夏の風物詩になった。
その町と大会の関係をよく知る人物がいる。箱根町の山口昇士(やまぐち・のぶお、74歳)町長だ。
山口町長は企画室長など町役場の要職を歴任後、1993年に助役に就任。Cat Ladies が初めて大箱根CC開催となった98年も同職で開催に協力。そして、2000年からは町長として、大会をバックアップしてきた。
22回目の開催を迎えるにあたり、改めて箱根町におけるCat Ladies の開催意義などを伺った。
2015年には開催が危ぶまれたことも
「ひとつの町で、ツアートーナメントがこれほど長く続いている例は少ないんじゃないでしょうか。Cat®のこの大会は箱根町の夏を彩る風物詩となり、毎年大勢の方が開催を心待ちにしています。このことは大変ありがたく思っています」と山口町長は開口一番、感謝の言葉を述べる。
しかし、大会の歴史をたどると、この間には開催が危ぶまれた年もあった。2015年の春、箱根山でごく小規模な水蒸気噴火が確認され、噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられたときである。
火山活動はまもなく終息に向かったが、メディアからはこの年のCat Ladies 開催を危ぶむ声が出た。
「大会開催は私どもが決められることではありませんが、噴火直後から、多くの方から何とか開催してくださいという声をいただきました」(山口町長)
一方、大会側は「安全第一」を条件に、例年通りの開催にこだわった。
「もともとこの大会は、主催のキャタピラージャパンが地元の地域振興を図ることを目的に企画された大会。(同社は地元・箱根町のために)『こうした状況だからこそ』と開催に向け、箱根町や関係各所と協議を重ね、開催を決定しました」(翌16年の大会パンフレット掲載のゼネラルプロデューサー=戸張捷氏挨拶文より抜粋)
地域の発展・活性化をインフラ整備から支える――それがキャタピラー製品のテーマ。箱根町が苦境のときこそ力になってあげたい。
幸い大会の時期には火山活動はほぼ平常レベルに戻り、結果、会場には例年以上のギャラリーが足を運んで下さり、予想を上回る盛況となった。
選手・ギャラリーはもちろん、町の関係者の笑顔を見たとき、大会側のスタッフは開催の決断が正しかったことを実感した。
参加型のレジャーとして観光に貢献
箱根は、ユネスコの支援で設立された「世界ジオパークネットワーク」により、地球活動(地質現象)の遺産に触れあえる観光地として、2012年に「世界ジオパーク」に認定された(周辺の2市3町によって構成)。
箱根町はこれを大きな観光資源に、このところ年間2100万人超の観光客が訪れ、うち460万人前後が宿泊するようになった。この数は、地方の観光地としてはトップクラスとみている。
それほどの人気観光地でありながら、しかも避暑地としてのトップシーズンにゴルフイベントを誘致する意義は?
「いまやインバウンドも視野に入れ、日本国中が観光に力を入れるようになりました。箱根町も、これまでのネームバリューにあぐらをかいているわけにはいきません。魅力ある観光の機会を作り、発信し続けていかないと観光客を他に奪われてしまいます。常に時代のニーズに合った観光資源を開発していくことが大事だと思っています。その点で、最近ニーズが高まっているのが参加型のレジャー・スポーツですが、トーナメント観戦もそうしたレジャーのひとつであり、Cat Ladies には地域の観光振興に大変貢献していただいております」と山口町長。
だが、箱根はもともと閑静な避暑地でもある。トップシーズンの開催に異論は?
「閑散期の観光の呼び水に、という発想もあるのでしょうけど、トップシーズンに開催するからこそギャラリーだけでなく、選手や大会関係者の皆さんにも喜んでもらえるわけで、だからこそ開催する価値があるんだと思います。幸い、町民から反対の声もありませんでした。別荘の住民も含め、みんなゴルフに理解があるからでしょう」
山口町長自身、昔は大いにゴルフに親しんでいた。最近は年齢と多忙を理由に、プレーする機会はめっきり減ったが、Cat Ladies はいつも熱心に観戦。最終日には特産品の「寄木細工」の副賞を優勝者に授与するプレゼンターを務める。
「Cat Ladies はすっかり“町のお祭り”的な行事になりました。多くの町民が楽しみにしているのはもちろんですが、実は別荘の多くの住民も大会にあわせて滞在しているようです」と町の賑わいを嬉しそうに語る。
大いに町の宣伝になりますね? と尋ねると、
「いえいえ。大会を利用するという姿勢ではイベントは長続きしません。箱根町はトーナメントの舞台づくりや大会運営をバックアップするだけ。舞台を活用するのはCaterpillarさんで、我々は皆さんが活動しやすいように支援するだけですから」と、あくまで裏方に徹する姿勢だ。
舞台づくりのバックアップ。
それはまた、キャラピラーが取り組むテーマでもあった。