台風19号は大型で強い勢力を保ったまま10月12日(土曜日)の夜に関東地方を直撃。東海から東北にかけての広い範囲で記録的な大雨をもたらし、土砂崩れや河川の氾濫など、列島に大きな傷跡を残した。
Cat Ladies の舞台=大箱根カントリークラブも、コース内を流れる早川が氾濫するなど、いたるところで冠水や土砂崩れが発生。周囲の山々に降り続いた雨が谷間を走り、激流となってコースに押し寄せ、一部で芝をえぐった。
ゴルフ場に設置された雨量計では、12日の降水量は892.5㎜。一方、気象庁の調べでは、同日の箱根町の降水量は922.5㎜に達し、観測史上の最多記録を大幅に更新した。箱根町の年間降水量は平均3538.5㎜だから、1年で降る雨の1/4の量がたった1日で降ったことになる。
「12日の午後から時間雨量80㎜程度の土砂降りが数時間続き、低いところは見る間に水没し、腰までつかるような池になってしまいました」と大箱根カントリークラブの崎山朋己グリーンキーパー(コース管理チーフマネジャー)はそのときの様子を振り返る。
崎山キーパーがこのゴルフ場でコース管理の仕事に携わって30年以上になるが、このような光景は初めてと語る。
通常のコース管理作業と並行して復旧作業の毎日
10月~11月の箱根は紅葉の美しい観光シーズン。ゴルフ場も大勢のプレーヤーで賑わい、週末はどこも予約でいっぱいだ。
予約したゴルファーのためにも、そして箱根町の復旧をアピールするためにも、大箱根カントリークラブは一日も早い営業再開が望まれた。
しかし、台風が過ぎ去ったあと、コースに出た崎山キーパーの目に飛び込んできたのは、自然の猛威による生々しい傷跡だった(画像参照)。
「そのときは頭が真っ白。何も考えられませんでした」と途方に暮れたそうだ。
すぐに復旧工事の準備を始めたが、人も重機も限られる。もちろん、周囲に応援を頼むわけにもいかない。人手も重機も、他所に回せる余裕はどこにもなかった。
それでもアウトコースの9ホールは4日後の10月16日にオープンできた。1~9番ホールを2度回ってもらうことで、プレーヤーを迎え入れたのだ。
だが、営業が始まれば、インコースでは土砂と格闘する一方で、アウトでは芝刈りなど日々のメンテナンス作業を確実に行わなければならない。
連日過酷な作業が続いた。
そして、2週間後の26日。インコースもようやく再開にこぎつけた。
しかし、依然、コースのあちこちに大雨と土砂崩れの傷跡が残っている。その完全修復の目途は立てられなかった。
というのも、例年この時期は来春行うグリーンの更新作業のための大事な準備期間。冬を迎える前にやっておかなければならない管理作業がたくさんある。修復工事に割ける時間も人員も限られるのだ。
「もっと多くのスタッフと重機を」というのが崎山キーパーの切実な思いだった。
遠く新潟から油圧ショベルを緊急搬送
その窮状を知ったキャタピラージャパンは、すぐに崎山キーパーに連絡した。
そして、大箱根カントリークラブの状況と有用な重機を確認すると、関東一円にこちらへ回せる重機を探した。
しかし、災害から2週間以上経っても、周囲には他所に回せる重機は一台もなかった。
ようやく見つかったのは、新潟で開発用に控える油圧ショベル=308SRだった。
遠い――だが、ゴルフ場の苦境を知るキャタピラージャパンに躊躇はなかった。急ぎ搬送を手配する。
そして、11月初旬。崎山キーパーのもとに待望の油圧ショベル308SRが届いた。
「作業効率が各段に上がりますから、本当にありがたかったです」と崎山キーパー。
これからのオフシーズンは、例年であれば管理スタッフ11人のうち、4人程度はグループの他のゴルフ場に出向する。しかし、この冬は全員が大箱根カントリークラブにとどまり、7人が通常のメンテナンス作業、残る4人が復旧作業に当たる。
「Catさんからお借りしている308SRのおかげで、復旧工事は芝の更新作業が始まる3月までに何とか終えられそうです」と崎山キーパーは笑顔で語る。
もともとCat Ladies は、地元の地域振興を図ることを目的に企画されたトーナメントだ。
大箱根カントリークラブの修復の遅れは、ゴルフ場や8月のCat Ladiesトーナメントだけでなく、箱根町の復旧のアピールや振興にも暗い影を落としかねない。
だから今回、崎山キーパーの要請に応えて急ぎ重機を手配し、結果、復旧に大きく貢献していることは、キャラピラージャパンにとっても嬉しく、誇らしいことだろう。