ICT施工は、ベテラン、初心者、それぞれにメリットをもたらす。
取材時に西建工業様が担当されていた現場は20ヵ所。それを15名のオペレータで遅滞なくカバーしているということでした。「機械50台に対してオペレータが15人しかいないというのは、少な過ぎると思われるでしょう。しかし、ICTの力を借りれば、一人ひとりが何人分にも匹敵する仕事をこなすことができます。百聞は一見に如かず。これからご案内する現場にも最近購入した325をはじめICT対応マシンを6台持っていっていますが、オペレータ2人で仕事を回しています」
西口社長に車で先導していただいて到着したのは有田郡の有田周辺広域圏事務組合クリーンセンター。西建工業様はこの現場で、従来から稼働している廃棄物処理場の隣に、汚泥再生処理施設を新設するための造成工事を請負っています。敷地の奥にある山から土砂を運び込み、D6T XLとCS54Bでミルフィーユ状に盛土を重ねて築いた基礎部分の法面を、チルトバケットを装着した325が手際良く整形しています。
325の運転を務めていたオペレータ歴20年のキャリアを持つ谷畑昌治様は「3D施工の便利さは、高度な作業を行うほどハッキリとわかる」とメリットを語られます。「たとえばチルトバケットでの角面整形は、通常の作業機操作とバケットチルト角の調整操作を一緒に行わなければならないため、ベテランでもなかなか難しい作業です。しかし、チルトアシスト機能をONにして3D施工を行えば、設計面に合わせてチルト角を自動補正してくれるので、操作がラクになって仕事のスピードもグンと上がります。325は、電子制御の採用によって運転しやすさがアップしているし、シートのクッション性なども良くなっていて、長時間乗っていても疲れにくく、集中力を切らさずに作業を続けることができます」
一方、「現場デビューから3D施工だった」という中丸貴礼様は、トレーラーのドライバーでしたが、現場で動くCatマシンに憧れ、西口社長に申し出てオペレータも兼務するようになったそう。「自分のように経験の浅いオペレータでも、ナビゲーションに従って操作すれば設計通りに仕上げることができるし、モニタを見ながら作業を行うことで『これだけ掘るには、このぐらいレバーを動かせばいいんだ』という操作感が自然に身に付けられる点も便利だと思います」
キャリアはまだ3年の中丸様ですが、ベテランの谷畑様と見事なコンビネーションでキビキビと作業をこなされていました。
ICT施工の先に見つめる未来、リモートオペレーション。
オペレータ、現場監督、経営者、一人で何役もこなして会社を急成長へ導いてきた西口社長が、今後の課題として掲げるのは、強い組織づくり。テクノロジを活用することで省力化・省人化することは可能になりましたが、強い組織をつくっていくためには人材が欠かせないと西口社長は語ります。「会社をやり始めたときに、人が来てくれなくて苦労したので、人材の大切さは誰よりもわかっているつもりです。ハンコを押せば機械を手に入れることはできますが、人材はそうはいきません。建設業に若い人材を呼び込むためには、“毎日、ヘルメットを被り、長靴を履いて、屋外で汗をかきながら働く”――
そんなイメージを払拭しなければなりません。私が次のステップとして挑戦したいのは、リモートオペレーションの実現です」
すでに被災地の復興工事などでは重機の遠隔操作が導入されていますが、西口社長が頭に描いているのは、エアコンの効いたオフィスに運転席を並べ、あたかも現場にいるような感覚でショベルやブルドーザを自在に操作するという、まったく新しいワークスタイル。「少し前までは夢のような話でしたが、5GやVRといった革新的な技術の普及によって近いうちに可能になると信じています。それが可能になれば、高所や足場が不安定な現場といった危険な場所に行かなくとも作業できるようになり、女性にも安心してオペレータの仕事に就いてもらえるようになります。また、距離や国境を越えて、世界中どこの現場でも仕事が行えるようになります。アフリカの広大な大地に無人のブルドーザを何十台も並べて一気に整地を行う、そうなったら面白いと思いませんか?若い人たちもきっと集まってきてくれるはずです」
お母様の実家が建設業を営んでいたため、子どもの頃からショベルやブルドーザは身近な存在だったという西口社長は、瞳を輝かせながら、建設業の未来を熱く語ります。「それを実現してくれるのは、キャタピラーだと信じています」
ICTと融合し、革新的な進化へのフェーズを迎えた建設機械。キャタピラーはそのパイオニアとして蓄積してきた技術と
ノウハウ、独自の開発力を生かして、建設業の未来を切り開いていきます。
西建工業株式会社
代表者:西口 敬一
本社所在地 : 和歌山県紀の川市桃山町調月563番地1
設立 : 2012年
従業員数 : 35名
事業内容 : 土木工事一式(情報化施工)、測量業(データ測量・ドローン・LS等)、
とび・土工工事業、関連する一切の業務