仙台市から北へ70km。岩手県との県境に位置する登とめ米市は広大な平野に田園風景が広がる宮城県内きっての米の産地。
株式会社渡辺建設様は、公共下水道の整備や水道施設工事などを通じて、地元の人々の暮らしと産業を半世紀以上にわたって支えてきました。
今回は、その3代目リーダーとして会社を率いる女性社長にお話を伺うとともに、新発売の次世代油圧ショベル Cat 308 SRをいち早くお使いになられたオペレータ様の声をお届けします。
職人気質を受け継ぎながら快適な生活環境の整備に貢献。
市の中央を迫川(はさまがわ)が流れ、東側を東北最大の北上川が走る登米市は、水資源に恵まれた肥沃な耕地を擁し、江戸時代から米どころとして知られてきました。収穫した米を廻船問屋が船に積み、北上川から海に出て、江戸へ登って行ったことから「登米」という地名が付いたともいわれます。初夏には源氏ボタルが清流を舞い、冬を迎えると白鳥やガンなどの渡り鳥が越冬に集まる「水の里」でもあります。
渡辺建設様は、この地で1963年に創業して以来、3代にわたって下水道工事や家庭内の水回りを中心とした施工・リフォーム業務などを担ってきました。
「創業者である祖父は、近所で有名な頑固者でした。しかし根っからの職人で、仕事でも一切手を抜かなかったので信用は厚かったと聞いています」
初代の築いた信頼を受け継いだお父様も「下水道は完成すると道路の下に隠れてしまう、だからこそ品質には徹底的にこだわる」というポリシーを持ち、渡邉由理様が3代目社長に就任した今も、社風として社員一人ひとりに浸透しています。
渡辺建設様が大きな躍進を遂げたのはお父様の時代。現場で指揮を執るお父様の姿をそばで見ていて、由理様は「地質の読みの鋭さ」と「工事を手際良く進める段取りの隙のなさ」に感銘を受けたといいます。
「掘削した土砂を積む際も、ショベルに対してダンプトラックをどんな角度で停めればいいかまで細かく指示を出していました。些細なことかも知れませんが、そうした一つひとつを効率化していけば、大きな差が生まれます。土木は力仕事という先入観を持っていましたが、頭を使って効率的な段取りを工夫する大切さを学びました」と由理様は語ります。
現在、お父様は一線を退いて会長職を務められていますが、由理様が社長となって6年を経た今も、現場の人員配備や安全管理の方法などについてきめ細かくアドバイスをしてくださるそうです
「父は重機に対するこだわりも人一倍、なので買い替えの際は必ず意見を聞くようにしていました。実を言うと先日購入した308 SRは、私の一存で購入を決めた最初の機械なんです。当社は長年Cat製品を愛用しており、現在保有する機械も大半はCat製品です。セールスの佐々木さんから小型油圧ショベルの次世代機が発売されるという話を聞いて製品説明をお願いしました。性能比較のために他のメーカーさんからもプレゼンテーションを受けましたが、当社が最も重視するコンパクトさをはじめとして、作業範囲の広さ、操作性、燃費など、多くの点で308 SRに魅力を感じたので発売日を待って購入しました。すでにいくつかの現場で使いましたが期待通りです!」
次世代油圧ショベルの開発思想をコンパクトに凝縮した308 SR。
Cat 308 SRは先日まで近隣の下水道更新工事に使われていたそうですが、取材にお邪魔したときには役目を終え、本社裏手にある駐機場で砂利資材の山積みをしていました。
新製品を実際に運転されたのは、常務取締役を務められている旦那様だとのこと。本業は大工などの建築業ですが、受注が重なった繁忙期などにはオペレータとして現場をサポートされているそうです。
「購入直後に試運転したところあまりにも乗りやすかったので、今のところ私の専用機みたいになっています。これまでに乗ってきた機械との一番大きな差は、作業した後の疲労の少なさ。住宅が両側に立ち並ぶ狭い道路での作業は、たえず接触に注意しなければならずストレスが掛かります。その点、308 SRは一回り小さく旋回できるという安心感があります。新しく搭載されたスティックステアにもすぐに慣れました。応答性がとても良く、イメージ通りの動作とスピードで、掘削・旋回・積込みが気持ち良く行えます」
作業性や操作性の向上に加えて、燃料消費量を大幅に低減(従来機比:最大20%)したことも、次世代油圧ショベルの開発思想を受け継ぐ308 SRのセールスポイント。その点について伺うと「燃費が良くなっただけでなくタンクの容量も増えているそうですね。乗り始めて3ヵ月ほどになりますが、実際に給油のための休車回数が減り、稼働率はアップしています」とお答えをいただきました。さらに常務は「エンジンをワンタッチで始動できるプッシュ式スタートや、反射に邪魔されずに前方の足元掘削が行えるハネ上げ式のフロントガラスなどユーザ視点に立った新設計も気が利いていますね」と評価してくださいました。
「ちょうど今日は308 SRが作業していた現場で管路検査が行われているのでご覧になっていってください。すぐそばの工区では050SRも稼働中ですから、そちらもぜひ」と、由理様に案内されて車で向かった先は、民家が立て込んだ住宅地。「管路テレビカメラ調査」と書かれた車両が停まっており、検査を行っている最中でした。カメラを搭載した自走式ロボットを配管内に通し、たわみなどがないか丹念に調べていました。さらにそこから歩いてすぐの畑に隣接する道幅2mほどの現場では、渡辺建設様の社員と050 SRが汚水管渠(かんきょ)築造工事をしていました。その下水道を利用するお宅はたった一軒。その一軒のために行っている工事なのだそうです。
「下水道工事は、縁の下ならぬ道の下から人々の生活を支える地味な仕事です。それでも社員たちはプライドを持って毎日頑張ってくれています」と由理様は語ってくださいました。
家族を思いやるように、社員を、そして地域を思う。
渡辺建設様は創業以来、半世紀以上続けてこられた下水道工事も、老朽化に伴う更新工事は8割がたを終え、あとは細い枝管を残すだけだといいます。
「工事の需要が減っていく中で、価格競争は激しさを増しています。祖父と父が積み上げてきた信頼のおかげで、当社は今のところ順調に発注をいただいていますが、先々のことを考えて動き始めなければなりません」
由理様は、第一の経営課題として「今後の事業展開」を挙げられ、あるプランをお持ちとのこと。「私の夢のようなもので、実現できるかどうかもわからないのですが…」。そう前置きして語ってくださったプランとは、地元の農地を活用した水耕栽培事業。お婆ちゃん子で子供の頃からお年寄りが大好きだったという由理様は、家業を継ぐ決意をするまで、老人介護など福祉の仕事に就きたいと考えていたそうです。
「当社でも60歳を超える高齢の社員が増えてきました。会社の近くに譲っていただける土地が見つかれば、長年尽くしてくれた社員たちが現場を引退した後も仕事を続けていける、そんな場所を作りたいと考えています。社員の生涯雇用だけでなく、地域の障害者雇用の一助にもなればいいなと思っています」と由理様は語ります。
また、渡辺建設様では先代の頃から地元の方々との交流を深めるユニークなイベントを開催しています。20年近く続く年末恒例のクリスマスイルミネーション。12月になると自宅の庭木や社屋周辺をイルミネーションで華やかに飾り、23日には社長自らがサンタクロースの格好をして、地元スーパーマーケットの協賛を得て準備した700個のプレゼントを子供からお年寄りにまで配るのだそうです。
社員はもちろん地元の方々との絆も大切にする渡辺建設様。私たちキャタピラーもより良い製品とご提案で、お客様との絆を深めていきたいと考えています。
株式会社渡辺建設
代表者: 渡邉 由理
本社所在地:宮城県登米市中田町石森字境堀71
設 立:1983年(創業1963年)
従業員数:20名
事業内容:下水道工事、土木工事、リフォーム工事、外構工事、水道施設工事、舗装工事 など